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2月28日に調布市で行われた萩尾都望さんの講演会へ行ってきました。
調布市の男女共同参画推進センターが企画した、人権について考えるというテーマの講演会だったのですが、ご自身の母親との関係を中心に、家族との関係を率直に語ってくださいました。
漫画家・萩尾望都としてではなく、家族との関係に悩む、一人の職業人としての一面を見せてくださったと言う意味で、大変面白い講演会でした。
漫画家という特殊な職業に40年間携わったが故に生じたであろう、家族関係にまつわる悩みや問題を、聞き手である私たちが、自分たちの問題として身近に感じやすい形で話してくださっていたのが、強く印象に残っています。

かつて母親との関係に悩み、また今、娘の母親となった身としては、この講演会の内容を今後との糧とするためにも、簡単にまとめておきたいと思います。

覚え書きなので、箇条書きです。
内容はその場でとったメモをベースにしています。
私の理解不足の部分もあるかと思いますが、ご容赦ください。


・ まず、講演会のタイトルとなった「イグアナの娘」のあらすじ紹介から講演会開始。
・ 萩尾先生は、幼少時の経験から“私らしく生きられることが幸福”という思いを持っている。
・ 萩尾先生のお母さんは、子どもに対して大変厳しい方だった。
本来親は、子どもに対して大人としての成長するのに必要な訓練を行うものであるが、萩尾先生のお母さんは、それプラス、自分の望む通りの人間になってほしいという思いが大変強い人だった。
・ 幼少時の萩尾先生は、絵や物語でさまざまなことを表現し、いろいろ想像することが好きだった。
常に “ここではないどこか”へ行きたいという思いを抱き、今いる“不自由な場所”から離れたかった。
・ 両親は、萩尾先生の絵について、賞をもらうなど評価につながった時には、ほめてくれたが、絵に対して基本的な理解を示すことはなかった。
・ 両親は、萩尾先生が漫画家としてデビューした時にも、”お絵かき”がお金につながることに驚き、職業として続けることをようやく認めてくれたものの、常にいつ辞めて、結婚するのかと尋ね続けた。
・ 学生時代はよい成績をとり、その後、良縁を得ることこそが正道と考えるご両親にとっては、萩尾先生の生き方は理解の範疇を超えていた。絵は趣味にして普通の生活にもどることを強く求められた。
・ お父さんの定年を期に、萩尾プロダクションを設立。お父さんを役員に迎え、会計等の業務を委託する。けれどもお父さんにとって、萩尾先生の仕事は、お絵かき教室を開催しているという認識だったらしく、萩尾先生が、アシスタントに給料を支払っているのを見て、本来ならば、指導料をとるべき弟子になぜお金を払うのかと驚いていた。女が仕事をするということを、どうしても理解できなかった。
・ お互いに対する認識があまりにも違いすぎた結果、先生が30才になったころ、両親と大ゲンカをし、会社は解散。家族とほどよい距離をとりつつ仕事をすることの難しさを痛感する。
・このケンカの4,5年後に「イグアナの娘」を執筆。
・ 萩尾先生のお母さんについて
幼少時から常によい成績をとることをもとめ、子どもの日常の様々な行動に制限を加えた。
当時萩尾家は、九州の炭坑街に住んでいたが、そこがホワイトカラーとブルーカラーの区別が激しい地域だったこともあり、遊ぶ友達にまで干渉された。365日お母さんは怒っており、萩尾先生は母親のスタイルを理解することができなかった。(お母さんの行動の実例をあげたあと「無茶だよ」とご自分で突っ込んでいたのが印象に強く残っています)
なぜ理想通りの子になってくれないのかという母の怒りがつらかった。
・ 「母と娘の関係」をテーマにしたマンガを書きたいという思いは常にあるものの、プロットを書きはじめると私情があふれ出て、作品としてまとまらない時期が長く続いていた。
・ある時、TVでガラパゴス諸島の番組を見る。岩場で陽に当たるイグアナの瞑想しているように見える姿を見た時に、イグアナの姿が胎児に似ていると感じ、物語にイグアナのモチーフを作品に取り入れることを思いつく。
これによってようやく「母と娘の関係」を作品化することができた。
・「イグアナの娘」を読んだお母さんからは、泣いたと言われた。萩尾先生は、なぜ泣いたのかは、怖くて聞けなかった。
・ 「イグアナの娘」を描いてしばらくして、偶然、お父さんから、お母さんは一番上のお姉さんがとても優秀だったため、常にお姉さんと比較され、駄目な子と言われ続けていたことを聞かされる。比較されて続けていたお母さんの生い立ちを知り、萩尾さんは、はじめてお母さんに同情を感じた。お母さんの子どもに対するヒステリックともいえる強要は「裏のないまっすぐなトラウマ」のようなものかもしれないと、とらえられるようになった。
・ 更に、40才を過ぎてようやく、お母さんにもいろいろあったんだと受け止められるようになった。
今ではお母さんに腹の立つことは減ったが、未だに仲良くはなれない。親子ってそういうものなのかなぁと、今は考えている。
・ 家族だけでも、人の考え方は異なっていて、理解することは難しい。「人の心は不思議な森のよう」それをかきわけて、探してみたいという思いが、萩尾先生の創作活動につながっている。

その後、質疑応答が行われる。
その中から印象残った質問をいくつかメモ。

Q:「イグアナの娘」を描いてかわったことは?辛かったことは?
A:人間をイグアナに置き換えた時、人間じゃないからわかりあえないのも当然だと思えるようになった。分かり合えない理由を探している間は辛かったが、親子には説明のできないこともあると思ったら、気持ちがストンと落ち、諦めも必要だと思えるようになった。

家族はどうしても似てしまう。アシスタントさんが、指示を間違えたときの自分の対応が、母そっくりで嫌になった。ただ、そういう時にどういう対応をすればいいのかは、わからなかった。
他の漫画家のアシスタントへ行って、そういう時にも怒らず、冷静に対応している姿を見て、はじめて怒らないで指示を出す方法を知ったというエピソードが可笑しかった。

Q:創作活動について
A:オチさえつけばなんとかなる(ほんとですか??)。ただ、結末へ至るエピソードの当てはめ方は常に考えている。
「トーマの心臓」連載時には、一回15頁を一週間で描かなくてはいけなかった。7日間のうち6日間はネームを考えていた。2日でエピソードを決め、あとはずっとそのエピソードをどう当てはめてゆくかを考えつづけていたこともある。

Q:萩尾先生の作品のエンディングは、常にそこで終わりではなく、続きを感じされる余韻があるように思うが、どうしてなのか?
A:もともとどのような話を読んでも、続きを妄想してしまう傾向があった。手塚マンガの影響も大きい。
そのため、”納豆みたいに微妙な糸を引くエンディング”をつくるようになってしまったのだと思う。

講演と質問の最後は、さすが萩尾先生!と思う見事な言い回しでオチをつけてくださっていました。
個人的には、講演の最後にさらりと言っていた“「人の心は不思議な森のよう」それをかきわけて、探してみたいという思い”について、もう少し掘り下げた話をお伺いしてみたかったのですが、それについては、今回のテーマとそれると判断されていたのか、深くお話されることはありませんでした。
ここには書くことをためらうほどに、かなり赤裸々にお父さん、お母さん、ご兄弟の関係について、お話してくださっていたことに驚きました。

萩尾先生は、緊張感に満ちた言葉を駆使して仕事をしていらっしゃる方ならではの、巧みな話術で、私たちに素晴らしいお話を聞かせてくださいました。
間のとりかた、語り口、すべてが人を楽しませるもてなしの心に満ちていたと思います。
本当にあっという間の90分でした。
貴重な機会を本当にありがとうございました。


イグアナの娘 (小学館文庫)イグアナの娘 (小学館文庫)
(2000/11)
萩尾 望都

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追記:「文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母」に収録されている萩尾望都さんのインタビューの内容がこの講演会とかなり重なっていました。是非ご覧下さい。

文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母
(2010/05/14)
不明

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コメント
はじめまして
はじめまして。
私も講演会行きました。
萩尾先生ってとても知的で魅力的な方ですね。
講演メモとても素晴らしくまとまって、そうそうと思いました。
萩尾センセはやはり永遠のあこがれの方です!
さち│URL│03/01 12:36│編集

さちさん

はじめまして!
コメントありがとうございます。
さちさんも昨日同じ会場にいらっしゃったんですね。

濃密な一時でしたよね~
私は、一日経っても、未だに余韻に浸っている感じです(笑)

私は萩尾先生のお話を伺うのは、初めてのことだったのですが、お話を伺ってますます先生のファンになってしまいました。
おっしゃるとおり、永遠の憧れの存在です!


ひまわり│URL│03/01 21:13│編集
リンクよろしいですか
事後報告で申し訳ないのですが、私の萩尾先生の講演会についてのブログにひまわりさんのこちらのページを紹介がてらリンクさせて頂きました。もし不都合がございましたら削除いたします。

http://ameblo.jp/happysachipon/entry-10470886269.html
さち│URL│03/03 14:14│編集

>さちさん

リンクの件了解いたしました。
ご連絡ありがとうございます。
さちさんの感想を拝見して、やはり書いておいた方がいいかなと思うところがあったので、私のメモも加筆修正しようかと思っています。
ご了承ください。
今後ともよろしくお願いします(^^)


ひまわり│URL│03/04 00:31│編集
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