松屋銀座店で開催している「黒井 健 絵本原画の世界 ~物語との出会い~」展へ行ってきました。

「ごんぎつね」「手ぶくろを買いに」の挿絵をはじめ多彩な作品を発表しているイラストレーター黒井健さんの展覧会。

ごんぎつね (日本の童話名作選)ごんぎつね (日本の童話名作選)
(1986/09)
新美 南吉

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手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)
(1988/03)
新美 南吉

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彼の色彩の瑞々しい雰囲気をみていると、画業40周年という言葉が不釣り合いな気すらするのですが、考えてみれば、私が子供の頃には、文房具のグッズなどにイラストを添えられていた記憶があるので、その位のキャリアがあって当然の方なんですね。

今回の展示をみて、驚いたのは、黒井さんが思いの外、いろいろな素材を駆使して、さまざまな技法を試みて作品を描いていたことです。

特に「でんぐりでんぐり」という赤ちゃん絵本は、お得意のパステル風の色合いは一切使っておらず、ここで出会わなければ、黒井さんの作品とは気がつかなかったと思うほど作風の違う作品でした。
とても可愛い動きのあるあかちゃん絵本だったので、娘がもっと小さい間に出会いたかったなぁと思わずにいられませんでした。

でんぐりでんぐり (けんちゃんとあそぼう 2)でんぐりでんぐり (けんちゃんとあそぼう 2)
(1982/03)
くろい けん

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また、会場を見て、改めて感じたのは、『黒井ブルー』とでもいいたくなるような、彼特有の青の表現の多彩さに、私は惹かれてやまないのだということでした。

正直、彼の描く生き物は、とくに幼児絵本になればなるほど、可愛くデフォルメされすぎていて、現実感がなく、ちょっと物足りない気分になってしまいます。
「ごんぎつね」や「手ぶくろを買いに」に登場する狐と、「猫の事務所」「ホテル」に登場する猫は、大好きなのですが・・・

猫の事務所 (日本の童話名作選)猫の事務所 (日本の童話名作選)
(1994/10)
宮沢 賢治

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ホテルホテル
(2006/09)
黒井 健

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これは、黒井さんが多用するオイルパステルと彼特有の技法自体が、動きの瞬間を捉えるよりも、その場面に流れるゆるやかな時間を切り取るのに適しており、激しい動きを描こうとすると、違和感が生じてしまうせいのかなぁという気がしました。

黒井さんの絵の特質は、風景や植物、そして本来ならば動くはずのない無機物(たとえば「よるのふね 」に登場する灯台のダンスなど)を動的に描けるところにあるのではないでしょうか。

よるのふね (ポプラ社の絵本)よるのふね (ポプラ社の絵本)
(2011/04/09)
山下明生

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技法的には異なるものの、黒井さんの絵には、スーラやポール・シニャックなど新印象派の人が多用した点描表現によって生じる、独特な空間に流れる時間と共通の空気が流れているように感じました。

そして、そういう彼の特質が遺憾なく発揮されているのが、「イーハトヴ詩画集 雲の信号」「私のイーハトヴ―黒井健Note Book」に登場する空の青さや雲の表現の美しさなのだと思います。

イーハトヴ詩画集 雲の信号イーハトヴ詩画集 雲の信号
(1995/09)
宮沢 賢治、黒井 健 他

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私のイーハトヴ―黒井健Note Book私のイーハトヴ―黒井健Note Book
(1997/10)
黒井 健、宮沢 賢治 他

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また「海のおっちゃんになったぼく」「よるのふね」に登場する水の表現にも強く心を惹かれました。

海のおっちゃんになったぼく海のおっちゃんになったぼく
(2006/06)
なみかわ みさき

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そう言えば水の表現の方が、いろいろな技法を駆使して、様々な表現を行っている印象を受けました。
最初にもかきましたが、黒井さんが、自らの作品に対して常に挑戦的な姿勢で挑む作家さんであることを実感することができたのが、今回の展覧会のもっとも面白い点だったように思います。

黒井さんの紡ぎだす色彩はとても繊細なものです。
そのことは、原画をみるとよりはっきりとわかります。
もともと印刷することを前提にかかれた作品なので、印刷物と原画の印象にそこまで差はないのですが、本によっては、紙質のせいで、その繊細さが失われて、残念な感じがするものもいくつかありました。
見比べてみると、やはり、原画の繊細な美しさに勝る物はないなぁ、と思わずにはいられませんでした。

展覧会会期は残り僅かとなってしまいましたが、『黒井ブルー』の美しさを、一人でも多くの方に実感してもらいたいと願ってやまない内容の展覧会でした。

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