教文館ナルニア国で開催していた「フェリクス・ホフマン絵本原画展―父から子への贈り物」展へ行ってきました。

実は、「おおかみと七ひきのこやぎ」」など、ホフマンの絵本は図書館で目にしたことはあったのですが、これまで読んだ記憶がなく、あまりなじみのある人ではありませんでした。

おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
(1967/04/01)
グリム

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多分、なにもなければそのままスル―していたと思います。
ところが、ツイッターでこの展覧会の評判が非常に良いよかったので、急きょ行ってみることにしました。
行って本当に良かったです!ホフマン展、予想以上に素晴らしい内容でした。

ホフマンの絵本は、自分の子供に向けて描いた手書き絵本がベースになっているそうで、今回は子どものために描いた手書き絵本も合わせて展示してありました。
手書き絵本と、出版用の絵本原画を、対比して見比べることができるのが、今回の展示の質を非常に高いものにしていた気がします。

彼の絵は決して子供に媚びておらず、むしろ子供を、自分と対等な存在と思って描いている気がしました。
美しいものを美しいと感じる感性は対等である、子どもたちにそう感じてもらえないような作品を作るわけにはいかない、と思って描いたかのような厳格さを感しました。
ホフマンの絵は、読み手である子供への慈愛と子供の能力へ信頼に彩られています。
だから子供への媚びがありません。と、同時に、場面の選び方など随所にテクストへの敬意を感じました。
絵本の挿絵はテクストを盛り上げる存在であることを痛感させられる作品群でした。

特に、「ねむりひめ」を見ていると、つい先日三菱一号館美術館でみたバーン=ジョーンズ展に出品されていた眠り姫を思い出さずにはいられませんでした。

ねむりひめ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)ねむりひめ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
(1963/10/01)
グリム

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バーン=ジョーンズの眠り姫は、眠りにおちた姫の周りを取り囲むように眠る、従者の女性の無防備なエロスが、強く印象に残る作品でした。
それはそれで素晴らしい世界だったのですが、ホフマンの作品と比較すると、ジョーンズにとって、眠り姫は、自分のフェティシズムをふんだんに盛り込んで構築したジョーンズが作り上げた物語の舞台装置だったように感じました。

一方、ホフマンの描く眠る従者は、階段わきで安らかに眠り、階段を登りきった先に眠る姫のもとへ、王子を誘う役割りを忠実に果たしています。
この辺りの構図は、文字の配置も含め、とても考え抜かれているのが素晴らしいと思いました。絵で物語をクライマックスへと導く演出効果に目を奪われる場面です。

このあたりは、絵のみで語るタブローと、文字と連携して初めて魅力を発揮する挿絵との差かもしれません。
バーン=ジョーンズの作品を見ていた時には、随分、挿絵的な絵だなぁと思ったのですが、この展覧会をみたことで、やはり、タブローと挿絵は随分違うものなんだということを、体感することが出来ました。

で、この眠り姫の中で、ホフマンが唯一、ストーリーにオリジナリティを盛り込んだのが、「父性愛」だった気がします。
表紙に描かれた幼い姫を、後ろから支える王様が象徴するのは、親の愛情です。
これは本来の眠り姫では、あまり強調されない部分ではないかと思います。
この挿絵、子供と一緒にこの本を読む親にとっては、思わず王様に感情移入したくなってしまう素晴らしい場面となっています。
このあたりに、「ねむり姫」がロングセラーとなっている秘密があるように感じました。

とにかくホフマンの作品は、どれも揺るぎない父性愛に満ちています。
親と子が、安心して楽しめる楽園のような作品を創り上げた、彼の創造力に感動せずにはいられませんでした。

この展覧会では、代表作である「おおかみと七ひきのこやぎ」や「七わのからす」、「ながいかみのラプンツェル」など多数の作品の原画がみられます。
特に、「しあわせハンス」の蛇腹折りを想定してかかれた原画は目をひきました。

しあわせハンス―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)しあわせハンス―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
(1976/10/20)
グリム

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なんでもこの作品、出版時に経費の都合で、当初想定していた蛇腹折りの形では出版できず、通常の本の形で出版されたそうです。
最後の場面で、お母さんに抱きつくハンスの可愛らしいことと言ったら!!
ところが、この素敵な場面、なぜか本になった時にはカットされてしまったようです。
なぜそうなってしまったのか、理由が気になるところです。本当に意図がわかりません。

また、ホフマンは、ステンドグラスなども手掛けていたそうで、ステンドグラスの写真パネルなども展示してありました。
このステンドグラスが、とてもモダンなデザインで、いつか本物を見たいなぁと思わずにはいられないような作品でした。

とにかくこの展覧会、なんといっても、展示してある作品の大半が、子どものために描いた手書き絵本とともに展示してあるのが素晴らしかったです。
お父さんにこんな素敵な絵本をプレゼントされる子どもって本当に幸せですよね^^
手書き絵本は、子どもが病気になった時、お見舞いとしてプレゼントされたのがはじまりだったようで、丈夫だった長女は、最後までプレゼントされなくてやきもきした、というエピソードも微笑ましかったです。

会場はかなり狭く、残念ながら、絵を展示する環境としては、あまり良好とはいえない場所でした。
もっとちゃんとした箱で展示するに値する内容の資料が目白押しだっただけに、少々勿体ない気がしました。

ただ、子どもが作品をみることを意識してなのか、通常の美術館よりもかなり低い位置に目線を設定して、絵を展示したり、子どもが楽しめるように手作りの子ヤギの家のコーナーを設けているあたりに、児童書を専門とする書店ならではの配慮が随所に見受けられるのには、好感が持てました。

会場は手狭だったものの、作品に対する愛が随所に感じられる展覧会で、それがホフマンの作品から伝わる愛とともに、来館者を癒してくれていた気がします。
本当にいい展覧会でした。
会期はすでに終わっていますが、あともう一回くらい行きたかったです。残念。

最後に今回展示してあった作品や、彼について書かれた本を紹介しておきます。
ぜひ、ご覧ください。

七わのからす七わのからす
(1971/04/20)
グリム

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ながいかみのラプンツェルながいかみのラプンツェル
(1970/04/30)
グリム

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赤ずきん (福音館の単行本)赤ずきん (福音館の単行本)
(2012/06/13)
フェリクス・ホフマン

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フェリックス・ホフマンの世界―父から子への贈りものフェリックス・ホフマンの世界―父から子への贈りもの
(1998/05)
フェリックス・ホフマン

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